「ゲイを題材にしている映画を見てみたい!」と思ったことはありますか?
ゲイに関心のある人はもちろんのこと、ゲイのことをあまり知らない人でも楽しめるゲイをテーマにした映画はたくさんあります。
そこで今回はゲイが見て面白いだけでなく、映画を愛する人なら誰が見ても面白いと思えるゲイに関するおすすめの洋画を5作品紹介します。
ゲイにおすすめ洋画① 狼たちの午後
狼たちの午後は、ニューヨークのブルックリンで実際にあった銀行強盗事件をモデルにした映画です。
監督は「十二人の怒れる男」で有名なシドニー・ルメット、銀行強盗犯をアル・パチーノが演じています。
この映画はアル・パチーノ演じるソニーが、ジョン・カザール演じるサルと共に銀行強盗を行うところから始まります。
しかし、もう一人いた共犯者は恐怖のあまりに逃げ出したり、その後お金を盗もうと思うものの銀行の金庫にはほとんどお金がないという有様!
さらに、ぐずぐずしているうちに警察に取り囲まれてしまったことから、人質を取って銀行に籠城する羽目になってしまう…という間の抜けた展開になっていきます。
映画の後半になって、ソニーの銀行強盗をした理由が明かされることで、この映画は意外な展開へと進んでいくのです。
捕まったソニーが警察官に自分の妻をここに呼べ要求し、警察に連れられてきたのはゲイの恋人レオンでした。
実はソニーが銀行強盗を働いた動機というのが、ゲイの恋人の性転換手術の費用を得るためだったのです。
1975年に公開された映画なので、今よりもゲイに理解のなかった時代を感じるにはぴったりの映画ですよ。
公開・製作国 | 1975年、アメリカ |
監督 | シドニー・ルメット |
キャスト | アル・パチーノ、ジョン・カザール、クリス・サランドン |
ゲイにおすすめ洋画② ぼくを葬る
ぼくを葬るは、『8人の女たち』の名匠フランソワ・オゾン監督が『まぼろし』に続いて挑む、“死についての3部作”第2章にあたります。
ある日、撮影中に倒れたことから病院で診察を受けたメルヴィル・プポー演じるゲイのカメラマンであるロマンは、医者から癌で余命3か月だと宣告されてしまいます。
最初のうちは自分が死ぬことが受け入れられないことから、家族や恋人にひどい態度を取ってしまうロマン。
ジャンヌ・モロー演じる祖母のラウラに自分が死ぬことを伝えると、少しづつロマンは自分が死ぬことを受け入れ、最後まで死と向き合っていこうとします。
死に向き合うとはどういうことなのかということを映画を見る者に問いかける、深く考えさせられる映画になっています。
映画のラストでは、幼年時代に家族と訪れた砂浜に横になります。
ロマンにとって最後の表情が見せる生と死の奥深い演技をぜひ見ていただきたいですね。
公開・製作国 | 2005年、フランス |
監督 | フランソワ・オゾン |
キャスト | メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ |
ゲイにおすすめ洋画③ ミルク
ミルクは、ゲイであることを公表し、同性愛者の地位向上のために立ち上がったハーヴェイ・ミルクの生涯を描いた映画です。
監督は自らゲイであることを告白した「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・ヴァン・サント、ハーヴェイ・ミルクをショーン・ペンが演じています。
この映画の時代背景は1970年代で、今回紹介した「狼たちの午後」とも時代が重なるんですよ。
日本でもLGBTや多様性といった言葉を耳にするようになりました。
しかし、それでもアメリカをはじめとする外国と比べてみると、法律の遅れだけでなく性的マイノリティに対して偏見を持つ人も少なくありません。
ですが、ミルクや狼たちの午後といった映画を見ていると、アメリカでも日本と同じような状況がかってあったことが分かるだけでなく、マイノリティに対して勇気を持って立ち上がろうとした人がいたことに心を動かされてしまいます。
この映画が見る人の心を動かすのは、ハーヴェイ・ミルクが最初こそ同性愛のために立ち上がったものの、それだけでなく黒人や高齢者などといったあらゆる社会的弱者のために活動したところです。
こうしたミルクの活動に共感を覚えた人が増え、公職に就いた一方で、そのことに反発する人たちの現れることで、悲劇的な最後を遂げてしまうミルク。
しかし、彼が投げかけた言葉は今も色あせることなく人々の心を打つものだといえるでしょう。
公開・製作国 | 2008年、アメリカ |
監督 | ガス・ヴァン・サント |
キャスト | ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン |
ゲイにおすすめ洋画④ ベニスに死す
まるで漫画の美少年が実際の場面に現れたのではないか、と思ってしまうような映画がこのベニスに死すです。
ドイツの作家トーマス・マンの同名小説が原作のこの映画は、監督がイタリアの貴族でもあるルキノ・ヴィスコンティで、ポーランド貴族の美少年タッジオをビョルン・アンドレセンが演じています。
病気療養のためにベニスに訪れたダーク・ボガード演じる老作曲家のアッシェンバッハは、宿泊するホテルでたまたま出会った美少年のタッジオに心を奪われます。
そして、彼の思わせぶりなまなざしや美しい姿を見るたびに心をときめかせていきます。
その頃のベニスでは疫病が流行りはじめましたが、それでもアッシェンバッハはベニスを去ろうとはしません。
とうとう彼が嫌悪した老人のように化粧で若作りをすることで、タッジオを求めてさまよい歩くのですが、疲れ切ったアッシェンバッは海辺のデッキチェアに体を横たえると、光のきらめく中にいるタッジオを見ながら最後を迎えるのでした。
この映画では、理性を重んじる老作曲家の少年に対する一方的な恋焦がれる思いが描かれているように思えます。
しかし、映画を最後まで見ると、タッジオの思わせぶりな眼差しはアッシェンバッハを死へと誘う悪魔の微笑みのようにも見てとれるかもしれません。
公開・製作国 | 1971年、イタリア、フランス |
監督 | ルキーノ・ヴィスコンティ |
キャスト | ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガーノ |
ゲイにおすすめ洋画④ 太陽がいっぱい
映画の中で具体的に描かれていないものの、映画評論家の淀川長治さんから「この映画はホモセクシュアル映画の第一号」と言わせたのが、この太陽がいっぱいです。
パトリシア・ハイスミスの同名小説(原題はThe Talented Mr. Ripley)が原作のこの映画は、監督が「禁じられた遊び」で名高いルネ・クレマンで、映画の主人公であるトム・リプリー演じたアラン・ドロンの出世作にもなりました。
アラン・ドロン演じる貧しい青年のリプリーは、モーリス・ロネ演じる大富豪の息子フィリップと過ごしていくうちに、彼に対する嫉妬心や怒りから、ある日海上のヨットで二人きりになると、ナイフでフィリップを刺し殺してしまいます。
フィリップの死体を海に捨てた後は、彼になりすますことで彼の財産とマリー・ラフォレ演じる婚約者のマルジュを手に入れようとしますが、ラストでは青い空と海の下で予想外の出来事が起こってしまいます。
太陽がいっぱいですのおすすめポイントは、なんといってもイタリアの青い空と海の中で輝くアラン・ドロンの肉体美とまるでラストの悲劇を予感するかのようなニーノ・ロータのもの悲しい主題曲の旋律でしょう。
リプリーとフィリップの間に介在するのはお金とはいえ、それだけではこの2人はどういった関係なのかというのが今一つ分かりません。
リプリーに自分が殺されるのではないかと考えたフィリップでしたが、その後も本当に殺されるまでリプリーと関係を続けていくことを見ると、淀川長治さんが解説するように、二人の間には映画では描かれていないホモセクシュアルな関係だったといえるかもしれません。
公開・製作国 | 1960年、イタリア、フランス |
監督 | ルネ・クレマン |
キャスト | アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネ |
まとめ
今回はゲイにおすすめの映画を5作品紹介しました。
ゲイをテーマとして描いた作品もあれば、監督自らがゲイである作品や、きわどい男性のホモセクシュアルな関係を描いた作品など、バラエティーにとんだ映画があることに興味を持ってもらえたことと思います。
これからの世の中は多様性が尊重される社会になることから、ゲイだけでなくLGBTを扱った映画や、自ら性的マイノリティである映画監督や役者も増えてくることでしょう。
ゲイに関する映画は他にもありますので、ぜひ探してみてくださいね。